デッキ空間という中間領域を設計する。
「中間領域」という考え方が設計者の中にあります。外でもなく中でもない中間的なエリア。リビングからフラットにつながるデッキ空間は、外でありながら室内空間と同じような感覚で使用できるように設計。靴に履き替えることなく外部空間に気軽に出られるようにしました。靴に履き替えることなく出入りできるということが大切な要素となります。
日常的に陽気の良い日はお茶を楽しんだり、日向ぼっこをしながら本を読んだり、子どもが遊んだりと日頃からリビングと同じような使い方ができるスペースに設計しておかないとメンテナンスが面倒くさいだけの無用の長物になってしまいます。アウトリビングとして外に出て生活するライフスタイルが日常的になるかどうかを住まい手としっかり確認することが重要となります。
「中間領域」は、室内空間の開放性を高め生活領域を広げる効果があります。外に出ていないときでも、リビングとデッキのつながりが拡がり感を与えます。
デッキの隅に植栽などを配置することで室内に豊かな景観をもたらし、夜には植栽をライトアップすることで昼間とは異なる生活シーンの演出ができます。
敷地の条件を最大限利用するために「中間領域」が設計に組み込まれています。建築地は住宅街の一角で、弧の字描くように道路と隣接する角地のような場所。適度な人通りと車の通行がある生活道路に接しています。道路とは1.5m程度の高低差があり程よくプライバシーを確保してくれる環境にありました。
道路側に「中間領域」を配置することで、室内と道路との緩衝エリアが生まれます。この緩衝エリアがあることで、カーテン無しでも生活できる開放性を担保した暮らしを実現しています。
壁に囲まれた中庭的につくられたデッキ空間は、日中程よく日差しを室内に届けてくれます。レッドシダーの壁が、日中の光を反射し室内の奥まで柔らかい光として届けてくれます。金属的なものに反射したものとは異なり、気持ちの良い明るさを提供してくれるのです。デッキ空間側には階段吹き抜けを設け、「中間領域」面した大きな窓から四季折々の光が沢山入り込むよう設計されました。
「レッドシダーの板張りは、外観ファサードのアクセントとなっています。これから育っていく外に植えた植栽とのバランスも考慮しながら外観の設計をしています。角地のような立地は、街並みの景観にも影響を与える場所であるため、景観を意識したファサードで設計することも重要であると考えています。このプロジェクトにおける「中間領域」の設計は、様々な意味を持っていて、多機能な場所となっています。
アクセスの多い玄関に複数のルートを設け利便性の向上を図っています。玄関からキッチンへつながる通路が玄関の奥行き感を与えエントランスの質感を向上させています。
突き当りを無くした回遊性のある設計は、暮らしやすい生活導線と開放感を与えてくれます。玄関からシューズクロークを抜けて書斎空間へ。書斎空間の先にはLDK。玄関からキッチンスペースを抜けてリビングにつながる導線もつくっています。
キッチンの奥の大きな窓は、新築時に植えたモミジの木が育ち窓一面に新緑と紅葉の色で染まり、季節感を暮らしに与えてくれるのを待っています。建ててから育てていくという暮らしの楽しみを設計に加えていくことも大切だと考えています。
間仕切りを極力なくし、吹き抜けなども多用したつながりのある空間には、住宅性能が欠かせません。住宅性能を熟知した設計士が設計していくことが様々な付加価値をつくりだしていきます。設計士のアイデアや暮らしの可能性を広げていくためにもしっかりとした構造と温熱環境が求められています。
DETAILS
デッキ空間という中間領域を設計する。
- 所在地:東京都町田市
- 敷地面積:62.27坪(205.866m²)
- 延床面積:38.31 坪(126.69m²)
- 家族構成:大人2人・こども1人
- Ua値:0.48W/m²K
- C値:0.13cm/m²
DESIGN
藤本 誠生
(藤本誠生建築設計事務所)