公園の中で暮らすように描く。

メイン写真

公園の中で暮らすように描く。

公園という場所は、不変性の高い土地です。一般宅地とは異なり、建物が建ったり、別の用途に変化する可能性が低い土地と言えます。公園には一定の緑があり、季節感を感じる要素が多い。その公園のポテンシャルを住まいの中に取り込めないかという挑戦がありました。

写真1

北西側の2面が公園に接する特徴のある敷地。しかも、公園はほぼ山の頂上にあり、公園の先の眼下には鎌倉の住宅街が一望のロケーションとなっていた。公園の人通りは少なくプライベートガーデンのような感覚もある贅沢な条件。このような条件は、なかなか無いと設計者である石川氏も考えた。「一層のこと公園も住まいの庭のように設計できないかと」。

写真3

正面の道路との高低差は1.5mほど。道路側からのプライバシーを確保するにはちょうど良い高低差であった。適度な高低差は階段の段数をさほど気にすることが無いため、日常の生活に影響を与えることなくプライバシーを確保できる。

写真4

駐車場の奥に程よい高さに位置するエントランスと中庭空間を配置。中庭空間は公園との境を極力なくし、一体感を重視した。公園のパブリックな空間を中庭を通じて住まいの中に引き込もうとの考えだった。

写真
写真

公園を住まいの庭の一部に取り込んでしまおうという欲張りな発想となった。公園との間の境界ブロックはなるべく低くカットし、つながりをつくりました。

写真5

通常であれば境界フェンスを作りたくなる条件であるため住まい手との理解は必須となる。土地のポテンシャルを住まい手としっかり理解することが、このプロジェクトの大きなポイントとなりました。結果、道路から公園への抜け感の良い建物配置となり、街の風通しの改善にも寄与しました。隣家との距離も一定程度離れることによってプライバシーも確保できた。

写真6

「まるで公園の中に暮らすように」、北西側にリビングを配置する。

写真
写真7

本来ならば、リビングは東南側に設計することが一般的であるが、このプロジェクトでは北西に配置。リビングには大きな吹き抜けを設け、北西側の壁は大きな窓を配置した。

温熱環境上も不利とされる北西側の窓配置であるが、この土地のポテンシャルを無視した設計は暮らしの魅力を半減させると判断しました。できるだけ高性能な窓を使用し、夏と冬の温熱環境を確保しながら開いていく。大胆に大きく設置された窓からは、四季を感じる公園の景観が一年中感じられるようになりました。

写真

公園を歩く人からも覗き込まれない高さに窓を設計し、カーテンをつける必要のない空間設計。

写真

リビングに隣接する階段は白いステップに。リビングに印象的に配置された階段は、途中に踊り場を設けリビングの一部として一体感のある場所となりました。

写真

階段を上がるとスノコの渡り廊下を抜け書斎コーナーにつながる。書斎コーナーからも北西の景観はとても良い。圧倒的に大きく開いた北西の窓は、眼下に広がる鎌倉の住宅街を一望できる開放的な空間となりました。

リビングと公園、中庭と公園、スタディコーナーと公園と。公園に隣接する土地のパフォーマンスを最大限活かした設計で生活を魅力的に演出しています。

写真

DETAILS

公園の中で暮らすように描く。

  • 所在地:鎌倉市
  • 敷地面積:63.2坪(208.9m²)
  • 延床面積:33.56 坪(110.96m²)
  • 家族構成:大人3人
  • Ua値:0.48W/m²K
  • C値:0.2cm/m²

DESIGN

石川昂 写真

石川 昂
(アーキテクチャー・ラボ 石川昂建築設計事務所)

1982年

神奈川県生まれ

2004年

日本理工学部建築学科 卒業

2005年〜

有限会社アーキテクチャー・ラボ

2016年

アーキテクチャー・ラボ 石川昂建築設計事務所 設立

事例1 写真 「非住宅感」を意識したファサード建築家・今知亮氏 事例2 写真 デッキ空間という中間領域を設計する建築家・藤本誠生氏 事例3 写真 公園に対して「コの字」に開く建築家・河添甚氏 事例4 写真 敷地延長の土地の回答建築家・中村俊哉氏 事例5 写真 地形を活かした玄関が2つある設計建築家・早川慶太氏 事例6 写真 公園の中で暮らすように描く建築家・石川昂氏 事例7 写真 北側リビングの選択建築家・河添甚氏 事例8 写真 好きなものに囲まれた至福の土間リビング建築家・河添甚氏 事例9 写真 葉山から富士を望む設計建築家・三島史子氏 事例10 写真 高低差を活かした設計建築家・戸田悟史氏